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【材料図鑑】 エンプラ入門 – PA6の特性と用途

PA6の切削加工

PA6(ポリアミド6)は、多様な産業で利用される高性能エンジニアリングプラスチックです。この記事では、PA6の切削加工における長所と短所、そして具体的な用途について詳しく解説します。

PA6樹脂とは?

PA6(ポリアミド6)は、ナイロン6とも呼ばれるエンジニアリングプラスチックで、高強度、高剛性、耐摩耗性に優れています。
その起源は1930年代にさかのぼり、アディポアミドの縮合によって合成されました。

この優れた素材は、自動車部品、機械部品、家庭用品、電気・電子機器などで幅広く使用されています。PA6の高い耐摩耗性と硬度は、特に摩擦が多い部品に適しています。ベアリング、ギア、カムなど、動きが必要とされる部品において、高い耐久性を発揮します。

また、PA6は適度な柔軟性を持ち、衝撃吸収能力にも優れているため、耐疲労性が高く、長寿命です。

吸水性がある一方で、湿潤環境や水中での使用にも適応できます。吸水によって寸法変化が起こることがありますが、適切な処理を施すことでその影響を最小限に抑えることが可能です。その一方で、水分の存在下では機械的特性が改善される場合もあります。

環境面でもPA6は優れています。リサイクルが比較的容易な熱可塑性樹脂であり、廃棄物の削減にも寄与します。リサイクルプロセスを経ても、その多くの特性は維持されるため、持続可能な材料として評価されています。

PA6の長所

PA6の切削加工における長所は非常に多岐にわたります。

優れた機械的強度と剛性

PA6は硬度が高く、引っ張り強度や圧縮強度にも優れているため、切削加工後も高精度かつ強度の高い部品を作成することができます。これにより、自動車部品や産業機械部品など、強度が要求される用途に最適です。

耐摩耗性の高さ

PA6は摩擦と摩耗に対して非常に強いため、動作部分や高摩擦部品に最適です。例えば、ギア、ベアリング、スライド部品などがその典型例です。長期間の使用にも耐え、メンテナンスの手間を減らすことが可能になります。

耐薬品性

多くの化学薬品や溶剤に対して耐性があり、腐食や劣化のリスクが少ないです。化学工業や医薬品製造などの厳しい環境でも信頼性高く使用できます!特に、油やグリースにも耐性があるため、潤滑剤を使用する機械部品にも適しています。この特性により、変性しづらく、長寿命を実現します。

耐熱性

PA6は、最高で約120°Cまでの温度に耐えることができます。これにより、エンジン部品や高温環境での機械部品など、高温環境での使用にも適しています。

電気絶縁性の高さ

これによりPA6は電気・電子機器の部品として多く使用されています。特に高電圧部品や絶縁が必要な箇所において、信頼性の高い材料として評価されています。更に寸法安定性が高いため、複雑な形状の部品を精密に形成することが可能です。

PA6の短所

PA6にもいくつかの短所が存在します。

吸水性

PA6は水分を吸収しやすく、吸水によって寸法変化や物理特性の変動が起こることがあります。湿度の高い環境下では特にこの影響が顕著で、精密な寸法管理が必要とされる場合には、この点に注意が必要です。適切なコーティングや絶縁処理を施すことで、この問題をある程度軽減することが可能ですが、完全に防ぐことは難しいです。

PA66はPA6より吸水性が低いことが特徴です。→PA66の解説はこちらです

低温環境下での衝撃強度の低下

寒冷地や冷凍環境では、PA6の衝撃強度が低下し、割れやすくなる傾向があります。特に極端な低温下での使用を検討する際には、この点を十分に考慮する必要があります。低温対応の素材と組み合わせて利用することで、欠点を補う戦略もあります。

燃焼性

PA6は燃える性質があり、火災リスクが高い環境での使用は避けるべきです。難燃化処理を施されたPA6も存在しますが、完全にリスクを排除することは難しいため、高温や火気のある場所での適用には制約があります。この点を考慮し、適切な防火対策を講じることが重要です。

摩擦係数が高い

摩擦が多い箇所で使用する場合、適切な潤滑剤の追加が必要になることがあります。摩擦や摩耗を最小限に抑えるためには、潤滑管理が重要です。油やグリスとの相性が良い点を活用し、効率的なメンテナンスを行うことが推奨されます。

紫外線への耐性が弱い

長時間の紫外線曝露により、PA6は劣化しやすくなります。このため、屋外での長期間使用を検討する場合には、紫外線防護のコーティングやカバーの使用が強く推奨されます。紫外線対策を講じることで、PA6の長寿命化が図れます。

切削加工においての注意点

PA6を切削加工する際には、いくつかの重要なポイントに注意が必要です。

刃物の選定

PA6は硬度が高く、摩耗性もあるため、硬度の高い刃物を使用することが求められます。特に、超硬工具やダイヤモンドコーティング工具が推奨されます。これにより、刃物の寿命を延ばしつつ高精度な加工が実現可能です。

冷却材の使用

過熱するとPA6の品質が劣化し、最終的な仕上がりに悪影響を与えるため、適切な冷却液を供給し、材質の温度をコントロールすることが不可欠です。冷却液の適切な使用により、材料の割れや変形を防ぎ、品質の高い最終製品を得ることができます。

材料のクランプ方法

PA6は滑りやすい特性を持っているため、しっかりと固定することで、加工中の振動や歪みを最小限に抑えることが重要です。適切なクランプ具を使用し、安定した加工環境を確保することが、仕上がりの品質に大きく影響します。特に、高速回転する工具を使用する場合には、クランプの安定性が非常に重要です。

切削条件

切削条件(回転速度、送り速度、切削深さ)の設定も欠かせません。過度な切削条件は、刃物の寿命を縮めるだけでなく、材料の表面品質にも悪影響を与える可能性があります。

PA6の用途

PA6は、その優れた特性から多岐にわたる用途で活躍しています。

自動車業界

エンジン部品、ギア、ベアリング、バルブ、ホース、ケーブルタイなど多くの部品で使用されています。これらの部品は高い耐摩耗性と耐熱性が求められるため、PA6の特性が特に活かされます。耐衝撃性が高いため、車両の安全性や耐久性向上にも貢献します。

電気・電子機器

コネクタ、スイッチ、絶縁部材として広く使用されています。高電圧や高温環境での使用を想定して作られており、PA6の高い電気絶縁性と耐熱性が重要な役割を果たします。

家電製品

外装や内部の構造部品としても、軽量かつ耐久性が高いため重宝されています。

家庭用品

キッチン用品、工具、スポーツ用品、アウトドア製品など、日常生活で触れる機会の多い製品に多用されています。これらの製品は、衛生面と耐久性が求められるため、耐水性と耐薬品性に優れたPA6が適しています。また、美しい光沢と仕上がりの良さから、デザイン性にも富んだ製品に仕上げることができ、消費者からの評価も高いです。

医療機器分野

特に、機械的強度と耐薬品性が求められる部品に適しており、医療機器や医療器具の一部として活躍しています。PA6の耐熱性と耐薬品性が、医療現場での高い要求に応えています。

食品加工機器

食品と直接接触する部分でも安全に使用が可能です。厳しい衛生基準を満たしながら、長寿命と高信頼性を兼ね備えた材料として評価されています。

3Dプリンティングの材料

PA6は高精度なプリントが可能で、プロトタイプ製作やカスタマイズされたパーツの製作に最適です。強度と耐久性を兼ね備えたPA6は、クリエイティブなプロジェクトで広く利用されています。特に、機械的特性と形状の自由度が求められる分野で、その適用範囲を広げています。

まとめ

PA6は、優れた機械的特性と加工性を持つエンジニアリングプラスチックであり、多くの産業で利用されています。
​​​​​​​高い機械的強度、耐摩耗性、耐熱性、耐薬品性、電気絶縁性などの長所を持つ一方で、吸水性や低温での衝撃強度の低下、燃焼性、紫外線耐性の弱さといった短所もあります。適切な加工方法とツールを選び、これらの特性を最大限に活かすことで、PA6を効果的に利用することができます。

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