【基礎知識】塗装業者に色と質感を伝える時に注意したい5つのポイント
塗装は製品の全体的な印象を大きく左右します。
色彩と質感が見事に組み合わさった商品は、その価値をさらに高め、強い魅力を放ちます。
ブランドの持つ力は、シンプルさと強さを兼ね備え、決して派手過ぎず、洗練されたデザイン力によって人々の目を引くものです。
そのデザインに強く貢献するのが、塗装処理です。
3Dプリンターやレーザーカッターの普及に伴い、多くの人が自由に「ものづくり」を行う環境が広がっています。このような流れの中でも、最終的な仕上げ工程となる塗装は、専門業者の高度な技術を求める場合があるのではないでしょうか。
市販の塗料、あるいは塗料メーカー様の調色で十分な場合は別として、自分だけのオリジナルな色や質感で製品の塗装を依頼したい方に参考にしていただきたい注意点があります。
オリジナルを追求するほど、より高いレベルの調色技術が求められます。デザインを担当する方は、望んだ色合いと質感を塗装業者にきちんと伝えることが重要です。
この記事では
「塗装業者にプロダクトの色と質感を正確に伝えるための5つのポイント」
をご紹介します。
1.色見本の利用
できるかぎり、具体的な色見本を提供することが重要です。
色見本でイメージの色を物理的に表現することで、言葉による説明よりも圧倒的な効果があります。
色見本に関しては、特別なカラーボードを用いる必要は全くありません。ご自身で表現したい色が見受けられる物品であれば何でもよく、例えば、お手持ちの市販製品でも問題ありません。
可能であれば、塗装を施したい製品と同じ材質の色見本が最適です。材質よって、色彩や光沢は大きく異なるものです。
物品の準備は大変なので、色見本になりそうな画像をEmail で送れば良いと考える方もおられるのではないでしょうか。
残念ながら、画像で色を伝えるのはトラブルの元です。主な理由を3つあげます。
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色味の再現性が低い
画面で見た色と実際の色が異なることが多いです。端末や画面の設定、明るさなどによって色の見え方が変わるからです。 -
光の当たり方で色が変わる
写真によっては、光の当たり方や影、色彩のバランスにより、実際の色と異なって見えることがあります。 -
メールやファイルの圧縮で色が変わる
画像をEmailで送る際には、多くの場合、ファイルが自動的に圧縮されます。この過程で微妙な色合いが失われ、実際の色見本とは異なる色に見えることがあります。
同様に印刷物を利用した色指定も難があります。
印刷物の色指定は通常、「CMYK」という4色セット(シアン、マゼンタ、イエロー、黒)で行われます。これ自体は、印刷業界では問題ありません。
しかし、このCMYK指定を塗装の色指定にそのまま使うと、問題が生じます。それは、CMYKの色空間が、実際の塗装で生じる色とは異なるため、指定通りの色を再現できないからです。
そして何より、印刷業界と塗装業界では色の見え方や使用する色材が全く異なります。塗料の色は、印刷インクとは異なり透明度や光の反射、屈折などにより見え方が変わります。特に、樹脂への塗装の場合、透明感や深み、艶など印刷では表現しきれない部分があるのです。
見本の持ち込みが困難なら郵送でも構いません。色見本は物理的に提示しましょう。
もし、求める色のサンプルがどうしても手に入らない場合は、極力近いものを送り、差分を言葉で伝えましょう。この場合は、実際に塗装する前に、調色した塗料を確認する工程が重要になってきます。
2.色の指定にカラーコードを使用
PANTONE やRAC(Royal Automobile Club)などのカラーコードを使用して色を指定することも効果的です。これらのカラーコードは業界標準であるため、塗装業者が正確な色を認識する上で非常に役立つ指標となります。
3.塗装の質感を具体的に伝える
製品の見た目やツヤ感、触感(例:シボやパール素材のような特別な質感)を明示することも大切です。これらの質感は製品全体の印象を構成する重要な要素であり、具体的な指示を塗装業者に伝えることが求められます。
色見本だけでなく、作成したいシボやパール感の見本も送っていただけると、より具体的に理解しやすくなります。シボの部分については、棚澤八光社様・日本エッチング様・アヤマダイ様の番手サンプルを頂ければ、近い加工が可能です。
4.製品の耐久性について明確にする
製品がどの環境で利用され、またその耐用年数がどれくらいであるかも、塗装業者へ伝えるべき点となります。これにより、業者は最適な塗装方法や材料を選択することが可能となります。
5.製品の使用環境を伝える
製品が使用される環境によっては、同じ色でも見え方が大きく変わることがあります。
その現象を色覚心理学では「色の恒常性」といいます。
私たちが見ている色は、単に物体から反射した光だけでなく、周囲の光源によっても大きく影響を受けます。蛍光灯の下では一見同じ色に見えても、その色は直射日光の下では全く異なって見えることがあるのです。
例えば、部屋の照明が暖かなイエロー基調であれば、白い壁もイエローがかって見えますが、その壁を自然光の下で見ると、真っ白に見えるでしょう。これは、私たちの脳が光源の色を計算に入れて物体の色を補正しているためです。
製品の色を決めるときは、使用シーンを再現した照明下で確認することが重要です。
特に、顧客が製品を最初に見る場所(店頭など)と、製品を実際に使用する場所(自宅、オフィスなど)の照明環境が大きく異なる場合は注意が必要です。色が安定して見えるように照明を調整するか、多種多様な光源下で色が適切に見えるような色を選択することが求められます。
そのため、製品の色を決定する際には、色見本だけでなく、照明環境も考慮に入れることが大切と言えるでしょう。
塗装業者に製品の主な使用場所を伝え、場合によっては実際の環境で色見本を確認することも検討してください。
以上が、デザイナーが塗装業者へ理想の色と風合いを伝える時に注意したい5つのポイントです。これらを活用し、自身のビジョンを具現化するためのコミュニケーションを深めていきましょう。
私達の塗装チームは、事前に色を確認いただくサービスも提供しています。 ご希望の色見本に合わせた調色を行い、試し塗りしたカラーパネルをお客様にお送りします。特に表現が難しいパール調などをお考えの方には、このサービスをぜひご利用ください。
なお、実際の製品に塗装を施した後に、イメージと違っていたと感じる場合もあります。 有償にはなりますが、塗りなおしのサービス提供が可能な場合もあります。
ご満足いただける製品づくりに寄り添った試作品づくりを行っていますので、ぜひ、お気軽にご相談ください。
ここまでお読みいただきありがとうございました。
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