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樹脂切削加工で反りを抑えるためのポイント7選

樹脂切削は、プロトタイプや小ロット生産において不可欠な工程です。
しかしながら、この避けて通れない工程で多くの製造業者が直面する課題が「反り」の発生です

樹脂材料は金属とは異なり、その特性上、切削加工中に形状が歪むことがしばしば見受けられます。この歪みを「反り」と呼んでいます。

樹脂切削を行う際には、反りを抑制し、寸法精度を確保するために様々な対策を講じる必要があります。本記事では、豊富な現場経験をもとに、反りを抑制して高品質な樹脂切削を実現するための重要なポイントを詳しく解説します。

1.適切な材料選定

反りを抑制するための最初のステップは、適切な樹脂材料を選定することです。

一般的に、熱可塑性樹脂は熱硬化性樹脂よりも反りやすい傾向があります。
たとえば、熱可塑性樹脂であるABS樹脂やポリカーボネートは加工がしやすい一方で、反りのリスクは高くなります。
一方で、エポキシ樹脂やフェノール樹脂は熱硬化性樹脂であり、反りが少ない特性を持っています。

使用する目的や加工条件に応じて、最適な材料を選ぶことが重要です。

2.切削条件の最適化

反りを抑えるためには、切削条件の最適化も極めて重要です。
切削速度、送り速度、切削深さといったパラメータを適切に設定することで、反りの発生を最小限に抑えることができます。

特に、切削速度が速すぎると熱が発生しやすくなり、材料が変形するリスクが高まります。反対に、切削速度が遅すぎると切削抵抗が増え、加工面にストレスがかかることがあります。

最適な切削条件を見つけるためには、実際の加工条件でテストを繰り返し行うことが必要です。
また、材料に対する切削方向を工夫したり、板材の片面だけではなく両面交互に切削することで力を分散させ、反りを抑制する方法も有効です。

3.工具選定とメンテナンス

適切な工具の選定も、反りを抑制するために重要です。
鋭利な工具を使用することで、切削抵抗を減少させ、材料の反りを防ぐことが可能です。
さらに、工具のメンテナンスも欠かせません。工具が摩耗していると、切削時に余分な熱が発生し、反りの原因となります。定期的に工具を点検し、必要に応じて交換や研磨を行うことが重要です。

4.冷却と潤滑

切削中に発生する熱を適切に管理するためには、冷却と潤滑が不可欠です。
切削液を使用することで、加工面の温度を下げ、材料の変形を防ぐことができます。特に、熱に敏感な樹脂材料を加工する場合には、冷却効果の高い切削液を選ぶことが重要です。
また、潤滑剤を使用することで、工具と材料の間の摩擦を減少させ、切削抵抗を軽減することができます。

ただし、樹脂の種類や製品の用途によっては、切削液や潤滑剤を使用できない場合もありますので、適用性を事前に確認することが必要です。

5.事前および事後の熱処理

樹脂材料は熱処理によって特性が変わるため、加工前後に適切な熱処理を行うことで反りを抑えることができます。このプロセスは「アニール処理」としても知られています。

加工前に材料を均一に加熱することで、内部の応力を解消し、加工中の反りを防ぐことができます。
また、加工後には冷却をゆっくりと行うことで、急激な温度変化による反りを防ぐことができます。
アニール処理は特に大型の部品や複雑な形状の部品を加工する場合に非常に重要です。

6.フィクスチャリングの工夫

フィクスチャリングとは、加工中に材料をしっかりと固定するための方法や装置を指し、これも反りを抑制するために重要な役割を持っています。
材料がしっかりと固定されていないと、加工中に動いてしまい、反りの原因となります。
適切なフィクスチャを使用し、材料を均一に固定することで、反りを防ぐことができます。また、柔軟な材料や薄い材料を加工する場合には、吸着盤や真空テーブルを使用することも有効です。

7.加工後の検査と補正

加工後には、部品の反りを検査し、必要に応じて補正を行うことが重要です。

反りが発生している場合には、加熱や機械的な手段で修正を行うことができます。特に、高精度が求められる部品では、このプロセスが欠かせません。

また、反りを防ぐためのフィードバックループを設け、次回の加工条件に反映させることで、反りをさらに抑制することができます。

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まとめ

樹脂切削における反りを抑制するための重要なポイントについてお伝えしました。

当社は、これらのポイントをしっかりと押さえることで、極力反りが出ないように努力と研究を重ね、高精度な部品を提供しております。下記無料相談から、お気軽にお問合せください。

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