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【基礎知識】インサートの種類とその特徴

この記事では、製品にネジ穴をあける際に母材の摩耗を防ぐために使用される「インサート」についてご紹介します。

インサートには多くの種類があり、その名称が似ているために混乱しやすい側面があります。また、商品名が通称として使われる場合もあり、覚えるのが難しいと感じることもあります。まずは、それぞれのインサートの特性を理解することが重要です。

本記事では、ヘリサート、エンザート、インサートナット、鬼目ナットの4つの主要なタイプについて解説していきます。

目次[非表示]

  1. ヘリサート(ねじインサート/コイルインサート)
  2. エンザート(一体型インサート)
  3. インサートナット(インサート)
  4. 鬼目ナット
  5. インサートの選び方と注意点

ヘリサート(ねじインサート/コイルインサート)

通称「ヘリサート」として広く認知されているこのインサートは、実は「ヘリサート」という商品名から派生したものです。今では、その名称が一般的な呼び方として定着しています。

ヘリサートは金属製のスプリング状のコイルで、その螺旋形状が特徴です。
ヘリサートを使用する際には、まず、専用工具を使用して製品にタップ(ねじ穴)をあけます。そのタップ穴にヘリサートを挿入します。ネジ穴に引っかかったコイルが母材を補強する仕組みです。

かつては、タングと呼ばれる「挿入用工具に引っ掛ける部分」があり、挿入後に、タングを折り取る必要がありました。この作業は少々コツが要り、技術を習得するまでは失敗することもありました。
しかし、現在ではタングが不要なタングレスインサートが開発されており、私達の現場でも、よく利用しています。

その他の代表的な商品名として、E-サート、スプリュー、リコイルインサートなどがあります。

ヘリサートは主にアルミニウムや耐熱性の高い樹脂(POM、アクリル、MCナイロン)を母材とするネジ穴に使用されます。

エンザート(一体型インサート)

エンザートは外側も内側もネジ形状になっているインサートです。ヘリサートのようなコイル状ではなく、一体型の構造を持っています。

外部ネジが母材にしっかりと噛み合うため、緩みを防ぎ、安定した接合を提供します。長期間の使用や高負荷条件下でも優れた耐久性を発揮する事が特徴です。

使用方法としては、 製品にあらかじめ下穴を開け、その下穴にエンザートをネジ込むことで固定します。ヘリサートのようにタップ穴をあける必要はありませんが、挿入時には専用工具が必要です。

エンザートは金属材料や高強度樹脂の部品、エンジン部品、機械部品など、耐久性が重視されるさまざまな分野で使用されています。また、振動や衝撃の影響を受けにくく、信頼性の高い固定が求められる場面に適しています。

ヘリサート同様、アルミニウムや耐熱が高い樹脂(POM、PMMA、MCナイロン)などに使用します。
ヘリサートより強度はでますが、使用箇所に必要な肉厚は大きくなります。

インサートナット(インサート)

私達がインサートと呼ぶのは、このタイプの「インサートナット」です。
内側にのみネジ形状があり、外側はギザギザのローレット形状を持ちます。

一般的には、樹脂製品の成形時に埋め込まれることが多く、外側のローレット加工によって強力な保持力を提供します。成形後に挿入される場合もあり、成形時に埋め込むものを「インサート」、成形後に挿入するものを「アウトサート」と呼ぶこともあります。

私達のような試作製造業では、切削など各種工法で加工した母材に対し、インサートナットを圧入または熱圧入します。熱圧入とは、インサートを加熱し、樹脂を溶かしながら圧入する方法で、これにより非常に強固に固定されます。

主にABSに使用されることが多く、割れやすい材質には不向きです。様々なタイプのインサートナットがあるので、製品の要件に応じて適切なものを選択します。

特徴としては、製品の機械的な接合作業を簡素化し、ネジの緩み防止や強度の向上する点が挙げられます。また、樹脂製品の組立・修理が容易となるため、非常に実用的です。

鬼目ナット

鬼目ナット(オニメナット)は、内側がネジ形状で、外側には母材にしっかりと固定されるためのギザギザや凹凸の形状が施されています。

その取り付け方法には、下穴にハンマーなどで打ち付けて挿入する「打ち込みタイプ」と、ドライバーや六角レンチを使ってねじ込む「ねじ込みタイプ」があります。

非常に多くの種類があり、用途や必要な強度に応じて選ばれます。

鬼目ナットは特に木材に使用されることが多く、家具製作のジョイント部分の強度アップやDIY、そして経年劣化や損傷によってネジ山が緩んだ場合の修復に非常に有用です。

私達は試作の材料として人工木材を使うことがあり、その際に鬼目ナットを使用して強度を上げることがあります。

インサートの選び方と注意点

インサートを選ぶ際には、使用する母材や用途に応じて適切な種類を選ぶことが重要です。また、専用工具が必要な場合もあるので、その点も考慮に入れて選定することをおすすめします。特に強度や耐久性が求められる箇所にはエンザートや鬼目ナットを、軽量で精密な箇所にはヘリサートやインサートナットを検討するのが良いでしょう。


種類
ヘリサート
エンザート
インサートナット
鬼目ナット
構造
コイル
一体
一体
一体
形状
スプリング
内側・外側ともにネジ
内側のみネジ
内側のみネジ
専用工具
必要
必要
不要
不要
タップ
専用工具で必要
不要
不要
不要
母材
アルミ
耐熱高めの樹脂
アルミ
耐熱高めの樹脂
ABS
木材
人口木材

まとめ

インサートには多くの種類があり、用途や母材に応じて適切な選択が求められます。ヘリサート、エンザート、インサートナット、鬼目ナットの4つの主要なインサートについて詳しくご紹介しました。それぞれの特性を理解し、適切なインサートを選ぶことで、製品の寿命を延ばし、性能を向上させることができます。今後のプロジェクトでぜひ参考にしてください。


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