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【基礎知識】インサートの種類とその特徴

ねじ部に強度を持たせたいときに使われる「インサート」。

インサートは、ヘリサート、エンザート、インサートナット、鬼目ナットなど種類が多く、「どれを選べばいいのか分からない」という声もよく聞きます。
この記事では、それぞれの構造と使い方を整理し、用途に応じた選び方を分かりやすく解説します。

ヘリサート(ねじインサート/コイルインサート)


ヘリサートの特徴


タングレスヘリサート

ヘリサートは金属製のスプリング状のコイルで、その螺旋形状が特徴です。
専用タップで加工した母材のねじ部に挿入することで、ねじ山を補強します。

主にアルミ部品や、耐熱性の高い樹脂(POM、アクリル、MCナイロン)に使用されます。
母材の強度を維持しながら、耐久性の高いねじ部を形成できるのが特長です。

また、既存ねじが損傷した場合の修理用途としても広く利用されています。
挿入後は母材とほぼ面一に仕上がり、外観を損なわない点もメリットです。


ヘリサートの使い方


ヘリサートの施工は、以下の工程で行います。

  1. 指定寸法で下穴加工を行う

  2. 専用タップでねじを切る

  3. 挿入工具を用いてヘリサートをねじ込む

  4. (タング付きタイプの場合)タングを折り取る

    タングとは「挿入工具に引っ掛ける部分」を指します。
    タングを折り取る作業は少々コツが必要です。慣れるまでは折り損じや取り残しが発生することもありました。
    現在は折り取り不要のタングレスタイプも普及しており、作業性や安定性の面で選ばれることが増えています。

ヘリサートの挿入工具
ヘリサートを挿入する様子

代表的な商品


ヘリサートは製品名として広く使われていますが、同様のコイル型ねじインサートはメーカーによって名称が異なります。
代表的な商品名には、E-サート、スプリュー、リコイルインサートなどがあります。
現場ではこれらを総称して「ヘリサート」と呼ぶことも少なくありません。

エンザート(一体型インサート)


エンザートの特徴


エンザートは、外周と内周の両方にねじ山を持つインサートです。
ヘリサートがコイル状であったのに対して、一体型の形状をしています。

下穴に直接ねじ込むことで、母材に雌ねじを形成しながら固定されます。
外周の刃が母材に食い込むことで、回り止め効果が生まれ、抜けにくく、高い保持力を得られます。

振動や衝撃の影響を受けにくく、信頼性の高い固定が求められる場面や、繰り返しの締結にも安定した強度を発揮します。
金属材料や高強度樹脂の部品、エンジン部品、機械部品など、耐久性が重視されるさまざまな分野で使用されています。

ヘリサートより強度はでますが、使用箇所に必要な肉厚は大きくなります。


エンザートの使い方


エンザートの施工は、以下の工程で行います。

  1. 指定寸法で下穴加工を行う

  2. 下穴にエンザートをセットする

  3. 専用工具でねじ込みながら挿入する

    ヘリサートとは異なり、専用タップ加工は必要ありません。
    母材に対して直角を保ち、一定のトルクで挿入することが安定した固定のポイントです。

エンザート挿入用の工具

インサートナット(インサート)


インサートナットの特徴


インサートナット

インサートナットは、内側のみにねじ山を持ち、外周はローレット形状の金属製の部品です。

ローレットとは、外周に刻まれた凹凸形状のことを指します。
この凹凸が樹脂に食い込むことで、抜けにくくなります。

樹脂は金属に比べてねじ山が摩耗しやすく、繰り返しの締結に対して強度が低下しやすい材料です。
インサートナットを埋め込むことで、金属ねじ部が形成され、安定した締結強度が得られます。

樹脂製品の組立や修理が容易になり、ねじの緩み防止や強度向上にもつながる、非常に実用性の高い部品です。

様々なタイプのインサートナットがあるので、製品の要件に応じて適切なものを選択します。


インサートの使い方


射出成形で製品を作る場合、インサートナットの挿入方法は大きく分けて2種類あります。

■ 成形時に組み込む方法(インサート
→射出成形の金型内にセットし、樹脂と一体化させる方法です。

■ 成形後に挿入する方法(アウトサート
→成形後の部品に対して、圧入または熱圧入を行います。

また、切削品や3Dプリント品などの母材には、アウトサート同様に、圧入または熱圧入します。

熱圧入とは、インサートを加熱し、樹脂を軟化させながら圧入する方法です。
樹脂が再固化することで、非常に強固に固定されます。
主にABSに使用されることが多く、割れやすい材質には不向きです。

インサートの使用例
インサートナットの使用例

鬼目ナット


鬼目ナットの特徴


鬼目ナット

鬼目ナット(オニメナット)は、内側に雌ねじを持ち、外側には母材に固定するためのギザギザや凹凸形状が施されたインサートです。
外周の凹凸が木材に食い込むことで、回り止め効果と抜け止め効果を発揮します。

木材はそのままねじ込むとねじ山が摩耗しやすく、繰り返しの締結に弱い材料です。
鬼目ナットを使用することで、木材でも安定した金属ねじ部を確保でき、家具製作のジョイント部の強度向上や、DIY用途、経年劣化によるねじ緩みの修復にも有効です。

非常に多くの種類があり、用途や必要な強度に応じて選定されます。

私達の試作では人工木材を使用することもあり、その際に鬼目ナットを組み込むことで、接合部の強度を高めています。


鬼目ナットの使い方


鬼目ナットの取り付け方法は、大きく分けて2種類あります。

■ 打ち込みタイプ
下穴をあけ、ハンマーなどで打ち込んで挿入します。
外周の爪や突起が木材に食い込み、固定されます。

■ ねじ込みタイプ
下穴をあけ、ドライバーや六角レンチを用いてねじ込みながら挿入します。
外周のねじ山が木材に食い込み、安定した固定が得られます。

鬼目ナット使用時のイメージ
鬼目ナットを打ち込み途中の状態

インサートの選び方と注意点

インサートの選定は、母材の種類・必要強度・施工方法を基準に行います。
それぞれの特徴を以下にまとめます。

種類

ヘリサート

エンザード

インサートナット

鬼目ナット

構造

コイル

一体

一体

一体

形状

コイル状

内側・外側共にネジ

内側のみネジ

内側のみネジ

挿入用の専用工具

必要

必要

不要

不要

タップ

専用タップが必要

不要

不要

不要

母材

アルミ
耐熱高めの樹脂

アルミ
耐熱高めの樹脂

樹脂

木材
人工木材


アルミや耐熱性樹脂にはヘリサート、より高い保持力が必要な場合はエンザート、樹脂部品にはインサートナット、木材には鬼目ナットが適しています。
母材と要求強度に応じて適切なインサートを選定することが重要です。

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樹脂製品試作の豆知識集表紙

樹脂製品試作の豆知識をまとめました

樹脂製品試作の豆知識集

樹脂製品の試作に役立つ、切削加工や組立の基礎知識を4つ抽出。
・インサートの種類
・隅角Rと根元R
・溶着と接着
・反り対策
ポイントをわかりやすくまとめました。

まとめ

インサートの選定は、母材・強度・施工方法のバランスで決まります。
構造の違いを理解しておくことで、設計段階でのトラブル防止や強度確保につながります。

試作についてのご相談は、下記よりお気軽にご連絡ください。