
樹脂の溶着と接着について理解しよう
試作の打ち合わせや見積書の中で「一体加工不可・分割貼り合わせ」という言葉が出てくることがあります。製品形状を作る際に、複数パーツにわけて加工し、それらを貼り合わせますよという意味です。
そして、樹脂を貼り合わせる方法は、2種類あります。それが、「溶着」と「接着」です。どちらが使えるかは樹脂の種類によって決まり、それが製作の可否にも関わってきます。
この記事では「溶着」と「接着」の違いと、樹脂ごとの対応可否を整理します。
溶着とは
溶着は、接合する材料の表面を熱・圧力・超音波・高周波・レーザー・溶剤などによって軟化または溶融させ、母材同士を一体化して接合する方法です。接合部が文字通り一体になるため、接合強度が非常に高くなります。
試作の現場では、溶剤を使った溶剤溶着が一般的です。
接着とは
接着は、接着剤を介して材料同士を結合する方法です。母材自体は溶融・一体化せず、接着剤の接着力によって接合します。樹脂だけでなく金属やガラスなど異なる材料を結合できる点が大きな利点です。ただし、接合強度は接着剤の種類や使用条件に依存します。
溶着
母材を溶融させて一体化
熱・溶剤などで材料表面を溶かし、一体化させます。接合部が母材と一体になるため、強度・気密性ともに高くなります。
試作現場で対応しやすい樹脂
ABS アクリル PC PVC
接着
接着剤を介して材料同士をつなぐ
接着剤が硬化することで表面同士が結合します。強度は接着剤の種類や使用条件によります。
試作現場で対応しやすい樹脂
アクリル PC PVC


接着剤の主な種類
溶着が使えない樹脂や用途では、材質と用途に応じて以下のような接着剤が選ばれます。
- エポキシ樹脂接着剤
2液混合型で強度が高く、金属・ガラスなど幅広い材質に対応します。
- シリコーン接着剤
柔軟性・耐熱性・耐候性に優れ、電子機器や建材などに使われます。
- ポリウレタン接着剤
弾性が高く耐久性に優れています。木材・プラスチック・金属に使用されます。
- 瞬間接着剤(シアノアクリレート)
速硬化型で小さな部品や細かい箇所の接合に使われます。
「一体加工不可・分割貼り合わせ」が見積書に出てくる理由
これらの制約が重なる場合は、製作不可としてご案内することもあります。事前に背景を理解しておくと、見積結果を受け取ったときの判断がしやすくなります。
接合が難しい樹脂の場合の選択肢
POMやPAなどの溶着・接着ともに対応が難しい樹脂でも、ネジ止めによる機械的固定が可能であれば、分割した部品を組み立てる方法で対応できる場合があります。ただし、以下の条件によって可否が変わります。
- 形状に十分な肉厚や締結スペースが確保できるか
- 水漏れや気密性が求められる用途でないか
また、接着が難しい材質同士でも、プライマーを使用することで接着性が向上する場合があります。プライマーは接着剤と材料の間に薄い層を形成し、接合強度を高めます。ただし、最終的な接合強度や耐久性に不安が残ることもあるため、ネジ止めやピン止めと併用するケースもあります。
「この樹脂では対応が難しい」と言われた場合でも、まず用途と条件をご相談いただくことで、代替案をご提案できるケースがあります。
溶着や接着の判断に迷ったら、まずご相談ください
使用樹脂や形状、用途をお聞きした上で、対応可能な接合方法をご提案します。
見積の内容についてのご質問もお気軽にどうぞ。
樹脂ごとの接合可否
樹脂 | 溶着 | 接着 | 当社での接合方法 |
|---|---|---|---|
ABS | 〇 | 〇 | 溶剤接着 |
アクリル(PMMA) | 〇 | 〇 | 溶剤溶着・接着 |
PC | 〇 | 〇 | 溶剤溶着・接着 |
PVC | 〇 | 〇 | 溶剤溶着・接着 |
POM | × | × | 貼り合わせ不可 |
PBT | × | × | 貼り合わせ不可 |
PP | × | × | 貼り合わせ不可 |
PPS | × | × | 貼り合わせ不可 |
PA6 | × | × | 貼り合わせ不可 |
PA66 | × | × | 貼り合わせ不可 |
MCナイロン | × | × | 貼り合わせ不可 |
まとめ
樹脂の接合方法は、「どの樹脂か」と「どのような用途か」によって決まります。
溶着・接着ができる樹脂であれば分割貼り合わせが可能ですが、難接着樹脂の場合はネジ止めや設計変更を含めた相談が必要になります。
見積書の記載内容に疑問があるときや、依頼前に接合方法を確認しておきたいときは、お気軽にご相談ください。
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