【基礎知識】樹脂の溶着と接着について理解しよう
樹脂同士を「接着」すると一般的に言いますが、技術的には「溶着」と「接着」という2つの方法があります。どちらの方法を使えるのかは、樹脂の種類によって変わります。「溶着」か「接着」かによって、製品の性能や寿命が大きく変わります。
この記事では、樹脂の「溶着」と「接着」について詳しく説明します。
溶着とは?
溶着は、溶剤などを使って樹脂を溶かし、結びつける方法です。
具体的には、溶剤が樹脂の表面を溶かし、その後溶剤が蒸発すると溶けた部分同士が一体化して強力に結びつきます。この方法は、強い構造や気密性が必要なときによく使われます。
溶着の主な利点は、接合部分が一体化するため、接合部の強度が非常に高いことです。私たちが「接着できる樹脂」と言う時、その多くは「溶着できる樹脂」を指します。それほど溶着の強度は信頼できます。
一方で溶着は、対応できる樹脂の種類が限られたり、溶剤の取り扱いに注意が必要だったりします。
接着とは?
接着剤を使って樹脂を結びつける方法です。接着剤を接合する材料の表面に塗り、それが硬化することで、接着剤が材料同士の表面にしがみつくように結合が形成されます。
接着の大きな利点は、多くの種類の樹脂だけではなく、金属やガラスなど異なる材料を結合できることです。また、材質に適した多くの種類の接着剤が、比較的容易に入手可能です。
ただし、接着強度は接着剤の性質や施工条件に依存するため、適切な接着剤の選び方と使い方が重要です。
溶着の具体的例
ABS、PC(ポリカーボネート)、アクリル(PMMA)、ポリ塩化ビニル(PVC)はいずれも溶着が可能な樹脂です。以下、それぞれの樹脂に適する溶剤について説明します。
ABSの溶着
アセトン:比較的速乾性で接合部の強度が高い。ネイルリムーバー等で使われ手に入りやすい。
メチルエチルケトン(MEK):溶解力が強いが、取り扱いに注意が必要。
溶剤系接着剤:アセトンやMEKを含む接着剤が一般的。
PC(ポリカーボネート)の溶着
メチレン・クロライド(ジクロロメタン):非常に強い溶解力を持ち、迅速に溶着可能。有毒性があるため取り扱いに注意。
塩化メチレン:こちらも強力な溶解力を持つ。有毒性があるため慎重な取り扱いが必要。
溶剤系接着剤:これらの溶剤を含む接着剤。
アクリル(PMMA: ポリメタクリル酸メチル)
メチレンクロライド: よく使用される溶剤。
エタンロール(ディクロロメタン): メチレンクロライドと同様の機能を持つ。
溶剤系接着剤:アクリル系接着剤。
ポリ塩化ビニル(PVC)
テトラヒドロフラン(THF): 多用途に使用され、強度の高い溶着が可能。
シクロヘキサノン: PVCを効果的に溶かすため、広く使われる。
溶剤系接着剤:PVC系接着剤があり、多くはTHFを含む。また、汎用的な塩化ビニル用接着剤も利用可能。
各種樹脂に応じた溶剤選択は、安全性や取り扱い方法にも注意が必要です。溶剤は揮発性があるため吸入や皮膚接触による影響に注意しながら作業を行うことが大切です。
接着剤の種類
非溶着系の接着剤には以下のような種類があります。
エポキシ樹脂接着剤:硬化剤と主剤を混合して使用する2液型の接着剤です。非常に強力で、金属やガラスなど幅広い材質に適しています。
シリコン接着剤:柔軟性があり、耐熱性や耐候性が高いため、電子機器や建材などの接着に使用されます。
ポリウレタン接着剤:弾性が高く、耐久性に優れています。木材やプラスチック、金属などに使用されます。
エラストマー接着剤:ゴム系の接着剤で、弾力性があり、振動や衝撃を吸収する特性があります。靴のソール、スポーツ用品など、頻繁に動いたり曲がったりする部分に使用されます。
瞬間接着剤(シアノアクリレート):非常に速く硬化する接着剤で、小さな部品の接合によく使われます。
接着剤の選択は、接合する材料の特性や使用環境に応じて適切に行うことが重要です。
補助技法
接着が困難な材質同士でも、プライマーを使用することで接着性が向上します。プライマーは、接着剤と材料の間に薄い層を形成し、接合強度を高めます。これにより、異なる材料同士の接着も可能になります。
ただし、プライマーを使用する場合でも、最終的な接合強度や耐久性に不安が残ることがあります。そのため、補助的な固定方法としてねじ止めやピン止めを併用することが推奨されます。
まとめ
樹脂の接合には「溶着」と「接着」の2つの方法があります。溶着は、樹脂同士を溶液で溶かしてくっつける方法で、とても強い接合ができます。一方、接着は、接着剤を使って材料をくっつける方法です。これは、異なる材料や溶剤に反応しない樹脂をくっつけるときに使います。
例えば、溶着は強度が必要な部品に適していますが、接着は作業が簡単で様々な材料に使えます。また、接合をもっとしっかりさせるためには、プライマーを使ったり、ネジ止めなどの補助具を使うこともあります。
このように、必要に応じて溶着と接着をうまく使い分けることで、より良い製品を作ることができるのです。
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