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製品開発における試作品とは?工法の選び方と製作時の注意点

試作品とは…製品開発における位置づけ

試作品とは、量産前に設計を実物で検証するために製作するモデルのことです。頭の中やCADデータの中だけで検討を進めるには限界があり、設計段階のアイデアを実際に手に取れる形にすることで、実用性や反応を確認できます。

本記事では、試作品がなぜ必要なのか、そして製作を依頼する際にどのような点を押さえておくとよいかを、目的別の選び方も交えて解説します。

開発全体の流れや試作の段階ごとの違い(デザイン試作・原理試作・機能試作・量産試作)については、こちらもご覧ください。
新製品開発の試作から量産までの流れとは?目的で変わる、試作の種類と手法

試作品はなぜ必要?3つの役割

試作品の製作は、製品開発を着実に前へ進めるうえで欠かせないステップです。主な役割は、設計の検証・反応の確認・設計段階でのコスト把握の3つです。

設計の検証

図面やデータだけでは気づきにくい、部品同士の干渉やサイズ感のズレを、実物を通して確認できます。

反応の確認

実際に見て触れられる試作品があることで、社内外からの反応や具体的な改善要望を得やすくなります。

設計段階でのコスト把握

実物にすることで、部品点数の多さや組み立てにくさなど、量産コストを押し上げる要因に早い段階で気づけます。

試作品製作で確認しておきたい3つのポイント

以下の3点を、目的に応じて確認しておくと、発注後の手戻りを防ぎやすくなります。

  1. 工法と材料の選定
  2. 加工精度
  3. 表面処理

1.工法と材料の選定

工法

得意なこと

数量の目安

材料面の注意点

切削加工

光沢仕上げなど品質の高い表面処理、精度検証・嵌合確認

1〜数個
(場合により数物も対応可能)

量産材に近い物性の材料を選びやすい

3Dプリンター

短納期での形状把握、複雑形状の確認

1個〜

積層方向で強度が変わりやすい(異方性)

真空注型

同一形状を複数個そろえたい検証・展示配布

10〜50個程度
(1型15〜20個・複数型で対応)

ライク材のため本製品と物性が異なる

試作金型

量産と同グレードの材料での成形

50〜1,000個程度

摩耗性の高いガラス入りなどの場合、消耗が早く、数量は減ります

以下では、表に収まりきらない工法ごとの実務上の注意点を補足します。


  •  切削加工 

嵌合や精度、見映えを確認したいとき

ブロック材や板材から削り出す工法のため、本記事で挙げた工法の中では寸法精度を出しやすいのが特徴です。部品同士の嵌合の確認や、量産品に近い精度での検証にも向いています。

意匠確認用に、光沢仕上げなど品質の高い表面処理を後工程で実施する場合も、下地の平滑さの観点から切削加工が有利な選択肢になります。

切削加工で製作した試作品

ただし、同じ樹脂でも切削品と成形品では内部応力などにより物性が完全には一致しない点には注意が必要です。

また、内側の隅には工具の半径分のR(刃物R)が残るため、図面で直角に描いた隅もそのままの形にはなりません。小さいRほど加工に手間がかかるので、相手部品との嵌合を確認したい場合は、許容できるR寸法をあらかじめ伝えておくと手戻りを防ぎやすくなります。

そもそも隅角R・根元Rとは何かについては、こちらで解説しています。
切削加工における隅角Rと根元R


  •  3Dプリンター 

とにかく早く形状を確認したいとき

短納期での形状把握や複雑形状の確認に強みがありますが、積層方向によって強度が変わる「異方性」に注意が必要です。方式によって程度が異なります。

  • FDM(熱溶解積層方式):異方性が特に顕著で、強度を伴う検証には不向き
  • 光造形方式:異方性は比較的小さい
  • 粉末焼結方式(SLS)のナイロン(PA12):密度や物性が量産品に近く、実用試験にも使われる
3Dプリンターで製作した樹脂試作品

何を検証したいかによって、適した方式が変わる点は押さえておきたいポイントです。なお、積層痕を磨きで消して下地処理を重ねれば艶のある仕上げも可能ですが、切削よりも工程が増える分、時間がかかる傾向があります。


  •  注型 

同じ形状を複数個そろえて検証・配布したいとき

量がまとまる場合は注型も選択肢に入ります。目安として同一形状を10〜50個程度製作したい場合に適しており、当社では、シリコン型1型あたり15〜20個前後を目安としているため、必要数量によっては型を複数製作することも検討します。

ウレタン着色注型の試作品

なお、塗装する場合は離型剤が使えません。
シリコーン系の離型剤を使うと塗料がはじいて密着不良を起こすためで、離型剤なしで型から抜く分、型の消耗が早まり、当社の実績では安定して取れる数量は10個前後まで下がります。

材料もABS相当・PP相当といった「ライク材」であり、本製品と物性が異なる点は変わらず留意しておきたいところです。また、寸法精度は切削や成形品より劣り、中級〜粗級が目安です。


  •  試作金型 

量産と同じ材料グレードで数量をまとめて検証したいとき

数量がさらに多く、本製品と同じ材料グレードでの検証が必要な場合は、金型を使う方法もあります。

試作金型は、短納期・低コストを優先した型で、型構造を割り切る分だけ消耗も早くなります。
50個程度から対応する場合が多く、当社の実績では、型から安定して取れる上限は数百〜1,000個程度です。

試作金型で作った試作品

なお、ガラス繊維入りなど摩耗性の高い材料では、いずれの型でも消耗が早まり、取れる数量は減ります。また試作金型はアルミ製のため、鋼材とは熱伝導率が異なり冷却条件が量産時と変わります。量産工程との整合性確認には、この点が制約として残ります。

1,000個を超える数量や、より高い精度が必要な場合は、簡易金型など別の型もご案内できます。


確認したい内容によって、適した工法も必要な精度も変わります。判断に迷う段階でもご相談いただけます。


2.加工精度

加工精度は、試作品の見た目や機能を左右する重要な要素です。ただし精度を上げるほど、加工時間や検査の手間が増える分、コストにも直結します。

まず整理しておきたいのは、「この試作で何を確認したいか」という点です。目的によって、求められる精度の水準は変わります。

  • 意匠確認・展示用モデル:見た目が整っていれば、量産と同等の厳密な公差までは不要な場合が多い
  • 部品同士の組み立て・嵌合の確認:公差の管理がより重要になる
  • 量産工程との整合性の確認:量産と同等の精度を求める場合がある

試作会社にこの目的をあらかじめ伝えておくことで、必要な精度に絞った提案を受けやすくなり、過剰な精度によるコスト増を避けることにもつながります。

樹脂切削における公差の考え方や指定方法についてより詳しく知りたい方は、こちらもあわせてご覧ください。
樹脂切削試作で失敗しないための公差設定


3.表面処理

見た目や耐久性を高めるために、塗装をはじめとした表面処理が必要になる試作品も少なくありません。試作会社が対応できる表面処理には、主に以下のような種類があります。

  • 塗装(ラッカー・ウレタンなど)
  • シルク印刷・UVインクジェット印刷
  • 真空蒸着
  • メッキ・アルマイト(金属部品向け)
  • シボ加工などのテクスチャー付与

素地(ベースとなる成形・切削の状態)の仕上げが、そのまま表面処理後の品質を左右します。
光沢仕上げなど品質の高い表面処理を予定している場合は、仕上がりから逆算して素地の仕上げ基準をあらかじめ決めておく必要があります。

素地の製作と表面処理で工程が分かれる場合は、この基準を関係者間で共有しておくと、仕上がりイメージと実物のズレを防ぎやすくなります。

表面処理を施した展示用の試作モデル

色や質感の伝え方によっても、仕上がりに差が出やすくなります。色見本や質感サンプルを事前に用意し、伝え方のポイントを押さえておくと、認識のズレを防ぎやすくなります。


目的別に見る試作品の選び方

 展示・プレゼン・社内検討・量産検証

ここまで工法や材料、精度、表面処理について個別に見てきましたが、実際にどれを選べばよいか迷う場合は、まず「何のためにその試作品を作るのか」から逆引きするのも一つの方法です。

目的

向いている工法

材料の例

数量の目安

展示会・商談用に見映え重視のモデルがほしい

切削加工(+塗装などの表面処理)

ABS、アクリルなどの樹脂、アルミ・真鍮などの金属

1〜数個

プレゼン・パンフレット撮影用のモデルがほしい

切削加工/3Dプリンター(+磨き・下地処理+塗装)

ABS、アクリル、光造形用レジン、フィラメント(PLAなど)

1〜数個

複雑な形状を再現したい

3Dプリンター

ナイロン、光造形用レジン、フィラメント(PLAなど)

1個〜

社内検討用に、まず形にして確認したい

3Dプリンター/切削加工

ABS、PC、POM、アルミなど

1個〜

短納期で展示会に間に合わせたい

3Dプリンター/切削加工

ABS、光造形用レジン、PLAなどのフィラメント

1個〜

同じ形状のものを複数個そろえたい(配布・比較検討用など)

注型(真空注型)

ABS相当・PP相当などのライク材

10〜50個程度

量産工法との整合性を確認したい

試作金型ほか金型を使う工法

量産と同グレードの樹脂(ABS、PP、PCなど)

50〜1,000個程度(超える場合は要相談)

該当する課題ページ

あくまで目安のため、形状や求める精度によって最適な組み合わせは変わります。迷う場合は、目的を伝えたうえで試作会社に相談するのが確実です。

具体的にどんな情報を伝えておくとよいかは、発注前のチェックリストとしてこちらの記事で詳しく解説しています。
試作品製作で必ずおさえておくこと

なお、金属部品が必要な場合は、上記いずれの目的であっても切削加工が基本的な選択肢になります。3Dプリンターにも金属対応機種はありますが、樹脂に比べるとまだ主流とは言えず、コストや対応可否は個別の相談が必要です。


まとめ|目的から試作工法を選ぶ

試作品の製作は、設計の検証から反応の確認、コスト把握まで、製品開発を着実に前へ進めるための土台になります。

工法や材料、精度、表面処理をどう組み合わせるかは、試作品で何を確認したいかによって変わってくるため、まずは目的を整理したうえで、試作会社に相談してみることをおすすめします。

当社では、樹脂やアルミの切削加工、3Dプリンティング、注型、塗装、シルク印刷、試作金型など、幅広い工法に対応しており、1点からのご相談も承っております。試作品の製作でお悩みの際は、下記の無料相談からお気軽にお問い合わせください。

よくある質問

試作品と量産品の違いは?

試作品は量産前の検証用モデルで、工法や材料が量産と異なる場合があります。量産品と同じ精度・材料での検証が必要な場合は、試作金型など量産に近い工法を選ぶ必要があります。

試作は何個から頼めますか?

1点からご相談いただけます。工法によって得意な数量帯が異なるため、必要数量を伝えていただくと適した工法を提案しやすくなります。

試作品の費用や納期はどれくらいかかりますか?

形状の複雑さ、数量、表面処理の有無によって幅が大きく、同じ工法でも数倍の差が出ます。たとえば試作金型は、形状によって費用の幅がとくに大きくなる工法です。納期も、加工内容に加えて工場の稼働状況の影響を受けます。おおよその見当をつけたい段階でも、形状(3Dデータまたは手描きスケッチ)・必要数量・表面処理の希望をお伝えいただければ、目安をご回答できます。

どの製作会社に相談すればよいか迷う場合は、技術面での相性を軸にした選び方も参考にしてみてください
試作会社の選び方|技術相性で判断するためのポイント

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