Fuse 1+(SLS方式)での試作|よくある課題と解決ポイント

はじめに

Fuse 1+(SLS方式/粉末焼結積層方式)で試作を委託する際、事前に理解しておきたい特有の課題や注意点があります。この記事では、それらの課題を整理し、対策方法についてわかりやすく解説いたします。なお、株式会社エムトピアでは、材質はNylon12 Powderを利用しています。

課題① 吸湿性による寸法変化

Nylon 12 Powderの吸水率は約0.66%と、一般的なナイロン系材料(PA6、PA66など)と比較すると低い方ですが、完全に無視できるレベルではありません。
湿度が極端に変化する環境では寸法精度や強度がわずかに変化する可能性があります。
湿度管理された環境で保管・使用することで、この影響を最小限に抑えることが可能です。

課題② 表面仕上げと摺動性

Fuse 1+(SLS方式)の造形品は粉末焼結の特性上、表面にザラつきがあり、摺動性はあまり良くありません。摺動用途では表面研磨やコーティングなどの後加工が必要となります。
また、勘合品(組立品)のクリアランスは0.3mm以上が推奨されます。

課題③ 積層方向と寸法精度

Fuse 1+を含め、粉末焼結積層方式の3Dプリントでは、Z方向(高さ方向)の精度が出にくい傾向があります。また、造形時の熱によりZ方向の上面には若干の凹みが生じる場合があります。

課題④ 造形後の粉末除去処理

粉末焼結積層方式(SLS方式)では、複雑な形状も造形可能ですが、造形後の粉末除去が課題です。細い溝や奥まった箇所などの粉末除去はブラスト処理および手加工でも限界があります。
微細な形状でも造形可能ですが、粉末除去作業が困難な場合、対応が難しくなります。設計時に粉末除去を考慮した設計にすることで効率的な造形が可能になります。
造形後の処理風景は下記動画を参照ください。

課題④ 冷却時間が長い

SLS方式では、造形後に機械の中で常温になるまで徐々に冷却を行います。冷却時間は造形密度によって異なりますが、冷却時間がプリント時間を上回る場合が多くあります。
冷却中はFuse1+の扉を開けることはできません。不具合が発生している場合、冷却時間が完了するまで造形品質を確認できないため、発見が遅れる可能性があります。
納期や工期設定時には、冷却時間を考慮した余裕あるスケジュール設定をお勧めします。

課題⑤ 強度保証について

試作を検討されるお客様から「試作段階で強度を保証できますか?」というお問い合わせを頂くことがあります。Fuse 1+(SLS方式)は、実際の製品に使用可能な強度での造形が可能な3Dプリンターですが、その可否は部品の形状や使用条件によって変わります。そのため、試作段階で強度を完全に保証することは難しいのが実情です。
お客様には試作を通して、実際に強度や性能を確認いただきながら開発を進めていただくことを推奨しております。
弊社では、お客様のご懸念や試作の目的を丁寧にお伺いしながら、設計段階から積層方向など強度に影響するポイントについてもアドバイスをさせていただいております。どうぞお気軽にご相談ください。 

まとめ

Fuse 1+(SLS方式)を活用した試作には、特有の課題がありますが、それらを適切に理解し、事前に対策を講じることで、より効果的で高品質な試作が可能になります。
強度や寸法精度、表面仕上げなどに関してご不明な点やご質問がありましたら、弊社にお気軽にご相談ください。

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